慟哭の大地21
「慟哭の大地」

21 中国残留孤児問題―与党案受諾 

 2007(平成19)年7月9日,中国残留孤児問題は与党案を受諾した。

 「幼少期に日本の教育を受ける機会がなかったために、ほとんどの人は日本語ができず、帰国後に おいても言葉の壁が厚く、また、生活習慣の違いも大きく安定した職を得ることは極めて困難であった。 このため、日常の生活に多くの支障をきたしているだけでなく、老後の生活の安定や備えができていない 状況にある。これまで、政府においても自立支援策を講じてきたが、結果としては残念ながら十分な 成果を上げたとはいえない。このため、現在、中国残留邦人の約6割が生活保護を受給しているが、 生活保護制度の運用として時として人間としての尊厳が傷つけられたこともあった。残留邦人の方々の 辿られた苦難のみちを振り返り、その窮状と切なる想いを考える時、我々は同じ日本人として手を こまねいていることはできない。」

 「中国残留邦人に対する新たな支援策」では、次のような提案があった。
 @ 老齢基礎年金の満額支給(2.2万円から6.6万円に)
 A 別途法律による給付金制度をつくる。生活費・住宅費用・医療費・介護費用などにも対応できる 制度をつくる。(生活保護の水準よりも実質的な収入が増加する)
 B 運用上の配慮。 ○中国語のできる「支援・相談員」を配置 ○中国残留邦人一世には就労 勧奨しない ○渡航期間中も給付金継続支給 ○養父母の見舞い、墓参り等の渡航費に係る収入は 認定除外 ○年金を自ら拠出した者の保険料相当額の預貯金を保有できる ○中国残留邦人が死亡した 場合、配偶者がある時には引き続き給付金を支給 ○資産の調査等をおこなうことなく自動的に支給  ○子と同居していることを理由に給付金の支給が受けられないことがないようにする。
 C 預貯金は保有することができる。資産価値が500万未満の不動産は保有することができる。
 D 中国残留邦人問題が生じた経緯やその後の遭遇した困難等について、国民に十分な理解を 得るため、普及啓発と広報活動及び新たな支援策のPRを実施することとする。
 E ○地域に於ける日本語習得支援、地域で活き活きと暮らすための仕組みつくり ○病院への 入院や通院、介護施設等の利用の際の通訳派遣 ○日本語の習得が十分でない二世・三世への就労 支援 ○終生にわたる公営住宅の優先斡旋の実現

 中国「残留孤児」国家賠償岡山訴訟・弁護団団長奥津亘先生は、次のような声明を出した。 「私たちは、訴訟の基本的な目的が達せされたことから、訴訟を終結させる方向を確認しているが、 支援策が、本当に一人一人の「残留孤児」の実情に即したきめ細かなものとして、実施されていく ためには、国と「残留孤児」代表らとの継続的な協議の場の設定は不可欠である。私たちは、 その行方について、今後とも厳しく見守っていく所存である。」

 近隣の日本人から「ねたみ」もおこるかもしれない。あらたな「人権差別」がおこらないよう見守って いくことが必要だと思う。


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