悲劇の青春5
「悲劇の青春」

桃山雪松中学校との交流

桃山雪松中学校生徒代表挨拶

 校門を入ると、男子生徒が赤色や青色や黄色や桃色の旗を立てて、ア−チを作ってくれていた。その歓迎ぶりに、まず驚いた。バスが、校舎前に到着して降りると、女生徒のブラスバンドが、我々を暖かく迎えてくれた。「歓迎日本客人光臨我校」と、赤地に白抜きした横断幕が目につく。

 今回の「悲劇の青春を訪ねる旅」を提案したのは、2年前の秋だった。村上中隊の元隊員で構成する「九六会」では、20年前から行こうという話が出たまま実現していなかった。私の誘い水が、後押しになって実現した。しかし、私は一つだけ提案をした。「それは、仲間内の慰霊だけにせず、村上中隊の元隊員を中心にして募金をし、21世紀を生きる中国の子どもたちに教育基金を寄付し、将来の日中友好に繋がる意義ある旅にしましょう」と、言った。村上中隊の元隊員の中からも「それはええなあ」と、快諾を得た。

 応接室に案内された。暑いお茶にスイカ・すもも・バナナまでが卓上にあった。校長や桃山学区の教育長は、いづれも四十歳前後の女性であった。ポニ−テ−ルのかわいい少女がお礼の挨拶をしてくれた。

 「尊敬している日本の皆様、雪松中学校の視察は、日中友好のためいいことです。学校を代表して心より歓迎します。我が雪松中学校は、発展中で財政的余力があまりありません。(中略)日本代表の皆さん、あなたたちが我が校にしてくれた教育基金は、お金だけでは計れない援助だと思っています。我が雪松中学校生徒は、21世紀に向かって、一生懸命勉強して国際社会の競争の中で、勝つよう努力したい。生徒を代表しまして教育援助に心からお礼を申し上げます。日中友好がさらに発展することを願っています」

 とてもしっかりした答礼であった。

 その後、生徒たちにバレ−ボ−ルとサッカ−ボ−ルを手渡した。夏休みであるのに、多くの生徒が参加してくれて、バスが見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。

 今回の寄付金は、約50万円集まった。村上中隊の元隊員やご遺族が、参加できないけど、ご供養にといって渡された。約50万円のお金には、その熱い思いが詰まっていることを知っている。その六割を2つの中学校に教育基金や教育用具として寄付した。元隊員やご遺族は理解してくれると確信している。 参加者14人全員、すがすがしい思いで、学校を後にした。


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