長島愛生園入所者自治会
会長 日野 三郎
旧事務本館は、1930(昭和5)年、国立第一号の療養所として長島愛生園が開園さ
れて以来の歴史的な建造物であり、終生隔離政策を進めてきた日本のハンセン病政
策の中核的役割を果たしてきた長島愛生園の歴史を伝え、語る上でも貴重な建造物
として、現在の新事務本館完成(1996年)移転後、施設当局並びに入所者自治会が
一体となって、保存について関係方面に要請して参りました。
2001年(平成8)年、熊本地裁での「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」の全面勝
訴が勝ち取られ、以後、東京にある高松宮記念ハンセン病資料館と共に長島愛生園
の資料館として、旧事務本館の整備、保存と運営のための専門職員の配置を原告・
弁護団の統一した要求として厚生労働省に提出しています。
以後、厚生労働省は、ハンセン病資料館施設整備等検討懇談会を設置し、資料館
問題について検討がなされ、当面は東京のハンセン病資料館を「センターとなる資料
館を充実することが優先課題であるが、今後各施設とも年次計画をたて、政府の責任
において、その特殊性に応じた資料館を考える。」と、中間報告で結論付けています。
長島愛生園の旧事務本館は、建設以来実に73年も経過し、老朽化が進む中で一
日も早い保存整備が必要であり、歴史的建造物を保存したいとする私たちの願いから
は程遠い結論といわざるを得ず、粘り強く独自に保存に向けた働きかけを行って参り
ました。
その結果、昨年よりようやく本格的補修工事に取り掛かり、現在は、恩賜記念館(現
資料館)に展示されていた諸資料を順次移転しつつある段階にきています。先日工事
関係者との打ち合わせでは、第一期工事の一階部分については、7月31日に完成予
定となっています。この完成を機に一階部分だけでも、歴史館としてオープンし、来園
者などに公開したいと考えているところであります。
残る二階及び一階の残り部分については、今後とも完成に向けて関係方面に働きか
けを強化していくと共に、運営・管理などについても具体的に検討を進めているところで
もあります。本格的完成に向けては、その道程は今だの感がありますが、日本のハン
セン病政策を推進してきた光田健輔長島愛生園初代園長の存在と、強制隔離政策を
継続し、長年にわたりハンセン病患者として苦難を与えてきた愛生園の歴史が刻み込
まれた建物だけに、歴史的遺産として保存すると共に、国による人権侵害の過ちを再
び繰り返させないための証しとして、後世にまで残していくことが、現在の私たちに課せ
られた責務であると考えているところであります。
旧事務本館の保存と、資料展示に関しては、岡山県及び地元邑久町が全面的にバッ
クアップして頂いていることは、私たちとって大きな支えとなっていることであり、今後と
も支援を期待しているところであります。
長島愛生園歴史館が、一日も早く完成することを願い、関係各位の更なる支援と援助
をお願いし、現状の報告と致します。
一階常設展示場完成予想図