「緑の大地」12
「緑の大地」

緑の大地 その5 ― 「中国は母国、日本は祖国」 ―

731部隊ボイラー跡

 求不再戦―「中国は母国、日本は祖国」

 戦後60年。

 高杉久治さんを通じてこの旅行から学んだ事は二点あった。

 第一は、中国残留日本人孤児にとって「中国は母国、日本は祖国」であることを改めて感じた。

 高杉さんは、中国では言葉で思いのたけをすべて表現でき、故郷の風景に思い出があった。 しかし、あこがれの祖国では不自由な日本語、生活習慣の違い、国の生活支援の不充分な現実に 直面している。

 これからは日中の架け橋として「誇りのもてる人間らしい暮らし」をしてもらいたいと思った。

 第二は、戦争の体験は確実に風化し始めているということである。

 「記憶」から「記録」となりつつある歴史の中で「現場」を見ることの大切さを改めて感じた。

 私たちの旅は、中国残留日本人孤児の歴史的背景を肌で感じるために実施された。弁護団や 支える会の人達と「現場」を踏んだ。そして、同時に「被害」の面だけでなく「加害」の面からも 歴史を直視した。

 ハルビンでは、侵華日軍731部隊遺跡で説明を受けた。また瀋陽では柳条湖事件のおきた場所で 日中戦争全体を理解できる「九・一八歴史博物館」を見学した。

 日本の若い人達も戦争の事実を直視して「后事之師」としてもらいたい。

 則武弁護士は感想文で以下のように述べられた。

 「731部隊遺跡や九・一八歴史博物館で感じた中国の人々の日本人に対する鋭い視線を 残留孤児の皆さんは一身に受けてきたのである。高杉さんが何故中国の安定した地位や生活や 人間関係を捨ててまで日本に永住帰国したのか?その答えの一つがここにある」

(山陽新聞夕刊8月23日付掲載)

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