中国・西域の旅
1991年8月14日(水) 上海からウルムチへ


6時頃一度目覚める。霧のため上海の市街地は手前の建物以外はぼんやり霞んでいる。7時15分、約束通り添乗員より電話でモーニングコール。
 8時、3階のレストランにて朝食、焼きソバ、粥など口に合うもの多し。
 南京西路は通勤の自転車の群れ、その一方で歩道を占拠し大極拳に興じる老若男女。中国らしい朝の光景をホテル前に見る。
 9時、ホテル一階に集合。バスに乗ったところで、使い捨てのはずのキーを集める。用心のためとか。延安路を経て上海博物館に向かう。9時30分着。
 3階の青銅器と4階の陶磁器の展示のみ鑑賞。売店で所蔵青銅器の小冊子を購入。博物館周辺散策。路地裏に町工場、外見上はアパートかオフィースかと思われる建物の中が実は縫製工場や金属加工工場になっている。道路上に突き出した竿に洗濯物を干しているのもおもしろい。陸橋より四方を撮影。
 10時45分、再び、延安路からチベット路を経て南京路の上海雑技場駐車場へ。隣接する美術展覧館を目当てにしていたが、休館中。自由行動はBさんと人民公園で時間をつぶす。入園料1元。睡蓮の展示会が行われていたが、それはともかく家族連れや若者など平日の日中にもかかわらず入園者多し。公園入口前の郵便局で切手を購入。はじめて人民元を手にする。
 南京西路を西に延安中路との三差路少し先の延安西路南側に本日昼食をとる達華賓館あり。中華料理のフルコース、ただしそんなに珍しい物なし。魚はヒラに似た淡水魚。冷えたビール旨し。食後、賓館の売店で漢方薬の冬虫夏草を見つける。26元。13時気温32度。
 添乗員のHさん、帰国の飛行機のリコンファームのため民航へ。我々は、波特曼酒店の前、上海工業展覧館へ。13時45分まで見物。テーブルクロス3枚、95元。
 上海空港に向かう。プラタナスの並木。懐かしいリヤカーも健在。政治的な看板と共に、西側(特に日本)の商品広告の看板目立つ。14時10分、空港着。
 手荷物のX線検査のみ、団体旅行の気軽さ。全くここでもトラブルなし。国内便出発待合室へ。15時15分発、9502便、ウルムチ行き航空機に搭乗。定刻離陸。離陸直後上海郊外の田園を見て2時間余り、華中の平原地帯は雲多く、下界ほとんど見えず。ときどき雲の隙間に田園と一定間隔をあけて配置されたごとき集落、都市が現れる。丘陵地帯に入ると気流の乱れか揺れが激しくなる。紙パック入りのブドウジュースが配られ、しばらくして、ランチ。チキンの味、インドのカレーを思い出す。ビスケット類は晩の水割り用のつまみに残す。機内に流れる日本の歌謡曲をアレンジしたBGM、窓外の単調な白雲の流れを眺めている内、いつの間にかうとうとする。一瞬機体が揺れたような錯覚に目を覚ますと、窓外は黄土色の世界。砂丘の波。人跡なし。水脈あればオアシスあり。赤い岩山、黒い岩山、褐色の岩、恐竜の背のような鋸状の岩が規則正しく並んでいるところあり。ペプシコーラによく似た味のアジアコーラとピーナッツ一袋配られる。
 空から見る人工物の頼りなさ。道路も鉄道も自然の摂理に逆らっては見たものの、何かあれば全て自然に帰してしまいそうな貧弱さ。18時50分頃、右手前方に雪を被った山塊。後ろから黄さんの声。「あれが(ウルムチから)天池に行く道です。」機は高度を下げ着陸体勢に、セメント工場らしきもの、そして平屋根の民家、畑、滑走路。19時50分ウルムチ空港に着陸。
 20時15分、荷物を受取、外へ。またもや迎えのバス現れず。乗合タクシー5台に分乗しホテルに向かう。ポプラ並木、露店のシシカバブーの臭い、ハミウリ、賑やかな街中、人出は多いが店の多くは閉まっている。21時20分、ウルムチ南郊のシンチャン友誼賓館着。21時30分、夕食。部屋割りのことと、隣で食事中のツアーグループの一人と何かあったのか我々の一行の一人Cさん大荒れ。
 22時過ぎにやっと部屋が決まる。外はまだ明るい。手紙を書き、ロビー横の売店で満への土産のカシミヤのカーディガン323元、英語版のシンチャン=ウイグル自治区の本12元購入。印章90元を注文。23時フロントに両替に行くがすでに閉まっている。
 風呂に入り、洗濯、水割りを飲みつつ一息。友誼賓館の回りにはほとんど何もない。街に出るには遠すぎる。