小説『悲劇の大地』 目次 |
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主人公の安田和子は、昭和十九年「大陸の花嫁」として、満州に渡った。戦後、逃避行の苦労も日ごろの忙しさの中で忘れかけていた。しかし、夫が戦後五十年に当たる年に、地元の高校で戦時中研究をしている高木先生を訪ねた。「高校生に満蒙開拓団の逃避行を話してほしい」と頼まれて、話に行った。その最中に阪神淡路大震災がおこり、恐怖に脅える被災者が体育館に、避難している様子を映像で見ながら自分の過去を思い出していく。 高木先生が、昭和二十年に現地で亡くなった勝(一歳)の五十回忌に、中国の東北部の跡地を教え子たちと行きましょうと誘われて出発することになった。
高木先生は、大主上房開拓団が、県や上房郡の勧誘があった歴史的事実を確かめ、慰霊の旅に誘い、県議や町長ら十八名が参加する旅となった。
哈爾濱の花園小学校での避難生活、方正での日本人公墓と残留孤児との出会い。勃利で勝の五十回忌をして時の中国人の厳しい視線をあびる。万竜開拓団でソ連軍の攻撃に合い大主上房開拓団の団長さん以下多くの団員が死亡したことやその中での森下春江さんの出産と子殺し。大茄子訓練所での井戸へ飛び込む集団自決と子殺しなど、安田和子が逃避行の中で起こった出来事の跡地を訪ねて行く。 また、大茄子訓練所は、岡山県の昭和十九年と二十年に満蒙開拓青少年義勇軍のいた場所でもあった。その関係者も、参加して当時の思い出を語る。
最後に一行は、ロシアの国境手前の大主上房開拓団に五十三年ぶりに訪ねるが、当時の跡を残すものはなかった。
こうした旅行の中で、当時の関係者が跡地を訪ね感慨と感傷を持つといった縦糸に加えて、地元の高校時代から聞き取りをし、大学生となって旅行に同行し、みずみずしい感性で歴史を感じている鈴木玲子ら若者が受け止めた「戦争」への思いを横糸として文を構成している。
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